「王様ゲーム 煉獄11.04」
金沢 伸明 著 読了。
王様ゲームシリーズ第10弾!
ついに「煉獄」の王様がその正体を現します。
再び、高校を舞台にした王様ゲームを描いた「煉獄」ですが、規模も範囲もメンバーも限定されているだけに、物語がリアルに進行して行って面白いですね。
やっぱり、王様ゲームはルーツである高校を舞台にしたものが読みやすいと感じます。
少しずつ状況が変わっていき、主人公の佐々山夢斗も自身の考え方を変えながら、成長していく姿が読みどころ。
生き残るために、自分にとって大切な人たちを守るために。
正しい考えかたを正当化するのか、限られた手段を選択してでも己の願いを求めるのか。
人間が、追い込みに追い込まれた時どう考えるのか?という心理描写が面白いなーと思いますね。
それでは、書評をスタートしていきます!
※ 過去の王様ゲームシリーズ3作品分の書評記事は以下からお読みいただけます。
今回のトピックはこちら!
「王様ゲーム 煉獄11.04」の主な登場人物
佐々山 夢斗、伊藤 由那、中島 陽平、城戸 宗介、岩本 和幸
このメンバーの紹介については、以下の書評記事に同様のことを記載しているため、そちらの記事をお読みください。
「王様ゲーム 煉獄11.04」のあらすじ
埼玉県内の高校で突如スタートした王様ゲーム。
原因は、王様ゲームを操ることができるプログラム「ナノクィーン」が誰かの手に渡り、その人物が何か目的を持ってその高校をターゲットにしているということだった。
すでに最初の命令が届いてから1週間が経過しており、クラスメイトは32名から18名まで減少。
悲劇は凄まじいスピードでクラスメイトたちを襲っていた。
一体、今回主導している王様はだれなのか?
そして、次第に生き残るためなら何だってやる!という理性を超えた不穏な雰囲気が漂う中、主人公の佐々山夢斗は生き残ることができるのであろうか?
加速する悲劇の王様ゲームが、ついに終焉を迎える。
正しいことだけを追求しても、生き残ることはできない
王様ゲームは、スタートしてから日を追うごとに、次々と理性がなくなっていくというのがパターンとして見受けられます。
最初は、
「人を殺してまで自分が生き残るなんて・・・」
という理性が働いた平和的思考の人間も多くいます。
しかし、誰かを犠牲にしなければならない命令が続き、自分自身の命が天秤にかけられ始めると、その考え方は変わってくるのです。
誰かを殺したって構わない。
自分が生き残るためならどんな倫理を逸脱した取引だってする。
手段は選ばない。
自分が生き残ることだけを第一優先に考えるんだ。
こういった思考が当たり前のように蔓延していき、正義感を持ったメンバーも、平気で裏切るシーンがあったりします。
どうしても、自分が生き残らなければ何にもならない!と考えてしまうため、仕方のない展開なのかもしれませんが、このような人間の思考がもたらす「真理」をうまく描いているなーと感じます。
人間の思考を突き詰めて、極限状態まで追い込むと、理性など眼中になくなるのでしょう。
夢斗の変化が、物語にも変化を生み出していく
主人公の佐々山夢斗は、平和主義者であり、誰かを殺すなんて考えられない!というタイプの少年です。
もちろん、自分自身も生き残りたいと考えてはいますが、そのために誰かを平気で殺すなんて言語道断だという思考。
これだと、
「誰かを殺す」
という命令が下された時点で、夢斗は生き残ることはできません。
生き残るチャンスとすれば、それは夢斗を狙ってきたクラスメイトと対峙し、正当防衛で思わず・・・という場面しかないですね。
しかし、物語が進んでいくにつれて、一緒に行動を共にしているメンバーに愛着がわいていきます。
この人たちを守るためなら、違うクラスメイトを犠牲にするのはやむをえない。
そう考えなければ、自分たちが彼らの犠牲にならなければならないんだ。
みたいな思考に変わっていくんですね。
これは、王様ゲームという極限状態と、大切な人間を守りたい!という夢斗の優しい心が生んだ、ひとつの成長の証なのだと思います。
できれば誰も犠牲にしたくないという考え方はなくしておらず、それでもどうしようもない時は大切な人を優先するしかないじゃないか。
こんな風に思考が変化することで、物語にももう一歩変化を与えていきます。
夢斗が守りの思考で動いていては、すぐに夢斗がやられてしまうか、激しい争いから避け続けるないようになってしまいますが、後半になると前衛で命令をこなそうともがく姿が描かれていて、手に汗握る展開に。
物語が急激なスピードで動き始めるあたりから、読む手が止まらなくなって面白くなりました。
「煉獄」の王様の正体がついに明かされる
この書評記事の中では王様の正体を明かさないでおこうと思いますが、物語の中ではついに王様の正体が明かされます。
常に、誰が王様なのか?と考えながらストーリーが展開されていきますが、正直な感想としては「意外な人物だったな」という感じ。
推理小説の展開をつかむのがうまい人なんかは、正体に気がつけるのかもしれませんね。
一人ひとりの行動が詳細まで描かれているわけではないので、夢斗の目線で語られた範囲でしか王様を絞り込むことはできませんが、それでもわかる人にはわかるのかもしれません。
ちなみに、てかてんも予想していた人物がひとりいたのですが、大外れでした(笑)
終わりに
シリーズ10冊目の書評を終えました。
残る2冊も年内に・・・と考えています。
最初は12冊という数に驚いていましたが、あっという間ですね(笑)
最近は、王様ゲームシリーズの書評ばかりを書いているので、読者の方々にとっては「つまらないかも?」と感じてはいますが、一度足を踏み入れてしまったので最後まで書評を書かせてください。
他にも並行して読み終えている本もいくつかありますので、折を見て書評を書きたいと思っています。
楽しみにしていていただけると嬉しいですね^^
本日も、てかてんの書斎にお越しいただきありがとうございました!
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