「スピン」
山田 悠介 著
今回は、6人の少年たちが同時刻に違う場所でバスジャックをする!というとんでもない設定の物語です。
インターネット上で知り合った少年たちは、世の中に何か大きな事をやってやろう!とバスジャックを計画し、東京タワーを目指していくという内容になっています。
少年たちそれぞれの心中と、トラブルを回避しながらもなんとか目的を達成しようともがく姿が描かれています。
現実であれば、バスジャックはとんでもない犯罪なのですが、物語として読んでいくと少年たちが人生でやっと真剣に取り組めた一つの目標の達成を応援したくなるような感覚になりながら、読み進めていけた感覚でした。
ということで今回は、山田悠介さんが書いた「スピン」を書評していこうと思います。
今回のトピックはこちら!
「スピン」のあらすじ
インターネット上で知り合った、顔も知らない6人の少年たち。
彼らはある日、同時刻にバスジャックを起こし、それぞれの住む街から東京タワーを目指す計画をスタートする。
世間を驚かせよう!という好奇心なのか、世の中に対する反感の表れなのか・・・そんな感情をそれぞれが胸に秘め、ついにバスジャックがスタートする。
道中、様々なトラブルが発生したり、警察の追跡から逃れようと必死になったりしながら、なんとか東京タワーを目指していく。
果たして、6人は目的通りに東京タワーで落ち合うことができるのか!?
東京タワーに向かうという1つの目標が少年たちに与えたものとは?
登場する少年たちの中には、世間に対して不満を抱いているものや、自分に自信が持てなかったもの、人生に目的を見いだせなかったものなどが含まれています。
そんな彼らが、インターネット上とはいえ、心許せる仲間と知り合い、そのかけがえのない仲間と一緒に計画した「バスジャックして東京タワーで会おう!」という目標は、結果として少年たちに何を与えたのでしょうか。
最終的には、世の中を騒がせ、犯罪を起こしてしまったわけですから、それなりの罪は償わなければなりません。
しかし、これまでの人生よりも、生きる意味を感じたり、目標を持てるようになったり、世の中に対しても不満が解消されたりと、彼らの心の中ではきっと変化があったのではないかと推察されます。
何より、これまでネガティブに人生を過ごしてきた彼らにとって、必ずプラスに働いていると感じます。
目標を持ち、それに向かって必死にもがくことは尊い
物語を通して感じたことですが、
「何か明確な目標を持ち、それに向かって必死にもがく姿は非常に尊い」
と感じました。
スピンに登場する少年たちの目標は、やっと手に入れたかけがえのない仲間たちに出会うこと。
これはとても素晴らしい目標だと思います。
しかし、手段がバスジャックだったことが残なところ。
少年たちにとっては、世の中にインパクトを与えるということも目標に含まれていたので、過敏な手段を選ばざるを得なかったのでしょう。
人生の中で、これだけ何もかも投げ捨ててでも成し遂げたい目標に出会うことは困難です。
一生見つけられない人もいると思います。
そんな目標を見つけ、正しくは無かったけれどなんとか達成しようと努力する姿。
本当は正しいやり方でやるべきですが、とても尊い勇姿を見たような気分になりました。
終わりに
山田悠介さんの作品は、どれも読みやすい文章で書かれていて、読んでいく中で難しいとかわかりにくいと感じることが少ない。
それが、たくさんの著作が愛される所以なのかもしれません。
それでいて、設定はどの作品も非日常感が味わえるちょっと過激なものが多く、刺激になります。
ページ数も比較的少なめの作品が多いので、数冊に一冊は山田悠介さんの作品を挟みながら、読書ライフを楽しめそうです。
一時期、山田悠介ブームが来ていて、まとめて10冊とか読んじゃったのですが、今でも未読で自宅にストックしている作品が7冊?程度ありますので、計画的に読んで書評して生きたいと思います。
本日も、てかてんの書斎に遊びに来てくれてありがとうございます!
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