「メモリーを消すまで」
山田 悠介 著
今回は、「記憶操作」をテーマに描かれた「メモリーを消すまで」という作品。
自分の記憶は自分自身にしか知り得ないものですが、「メモリーを消すまで」の世界ではすべての国民の脳に埋め込まれたメモリーチップを使えば他人でも記憶を知ることができる。
高度な試験を突破した一部のエリートにしかその操作を行うことはできないが、どんなに厳重に管理したところで悪事を働く人は必ずいる。
そんな人間の闇の部分と、悪事を絶対許さない正義との戦いが描かれています。
「メモリーを消すまで」は、山田悠介さんの代名詞とも言える「ホラー」で描かれた作品ではありませんが、ストーリーが凄く練られていてとても読み応えがありました。
なんといっても、記憶を操作するという設定が面白さを引き立たせていますね。
あらすじや感想を含めながら、この面白さについて書評していきたいと思います。
それでは、今回のトピックはこちらです!
「メモリーを消すまで」のあらすじ
犯罪防止策として、全国民の頭にメモリーチップが埋め込まれている。
そして、大きな犯罪を犯してしまったものには、メモリーチップから犯罪に関わる記憶が排除されたり、更生の余地がない場合には記憶の全消去が実行される。
この記憶操作が行えるのは、難関な試験を通過し、「MOC」と呼ばれる組織で認められている操作官だけと決められており、操作官も他の記憶を除くことや保存・消去を実行することは法律で禁じられている。
相馬誠は、正義感が強く、悪行を行うことは絶対に許すことができない真面目な操作官である。
しかしある時、記憶操作を悪用してお金を動かす奴らや、自分の地位や名誉のために記憶操作を悪用する奴らが裏で活動を始める。
そして相馬は、そんな腐敗した権力闘争に巻き込まれてしまう・・・
地位や名誉を手早く獲得するために悪さをするのは間違いですよね
こんな感じの物語を読んでいるといつも思うんですけど、やっぱり自分の昇格や地位・名誉の獲得のために裏で悪さをすることは最低だと思うんです。
ものすごーく当たり前のことを言っていますが(笑)
半沢直樹の原作なんかもそうですね!
会社や企業を舞台にした、裏工作をする上司連中と必死に正義感を保ちながら戦い続ける一般社員。
このような構図を見ると、凄く面白いんですけど悪さをする上司連中にはすごくイライラしてしまいます。
やっぱり、ずるい方法で上に上り詰めるのではなくて、正攻法でいきたいですよね。
小説の物語の世界では、裏工作やずるい方法っていうのがものすごく誇張されて表現されていますが、現実世界でも多かれ少なかれあるんだろうなと思ってしまいます。
政治家の天下りとか、よく分からない謎の人事移動とか、何も功績を挙げていないのに上位層に気に入られて昇格する人とか・・・・
案外身近にもあるのかもしれませんね。
記憶を操作できるとしたら何がしたい?
さて、もしも記憶操作ができるとしたら何がしたいか?ってことを考えてみたいと思います。
普段は記憶の操作なんてできないので、考えることはあまりありませんが・・・
それこそずるいことなんですが、語学の知識を脳にインストールしてみたいなーとか、作家先生の知識や経験を脳にインストールしてみたいなーとか思いますね(笑)
あんまり激しい記憶の操作をしてしまうと、自分自身の人格が変わってしまいそうで心配なので、今の自分に新しい能力を追加する程度の記憶操作が理想かなと思います。
周囲に「おかしいな」と思われるほど記憶を変えてしまうと、これまで自分が培ってきたものを崩してしまう危険性があります。
こうして考えてみると、てかてんはちょっとビビりなのかもしれませんね(笑)
度胸があれば、もっと面白いこととか、それこそもっと悪いことに利用しようと思っちゃう人もたくさんいるかも。
皆さんは、もしも記憶の操作が可能だとしたらどんなことをしますか?
素晴らしい技術の発展には、とんでもない悪行が付いてくるものなのかも?
何かの書評記事でも書いたような・・・気がしますが、
やっぱり素晴らしい技術が発展すると良いことばかりではなくて、それを悪用する悪者が必ず登場してしまいます。
電話っていうとても素晴らしい技術が発展した裏には、「おれおれ詐欺」とか「振り込め詐欺」といった、電話だからこそできてしまう詐欺が成立してしまっていたりします。
素晴らしい技術は、使い方が正しいと本当に素敵な技術なのですが、逆に素晴らしいからこそ悪いこともできてしまう。
表裏一体というか、非常に難しいところだと感じています。
近年は、スマートフォンをはじめとして、どんどんITの技術が発展しています。
ということは、正しく使えば劇的に生活が豊かになるということです。
もちろん反対に、悪い奴らが悪用すれば、とんでもないことにもなっちゃうかもしれません。
私たち一般の消費者は、そういった悪用の可能性があるということを頭に入れて、常に疑う姿勢を持ったり、悪行を見抜く目を養っていく必要があるんだと思います。
悪行を規制するために、技術の優れた部分まで利用制限をかけてしまうと本末転倒。
優れた技術を正しく、そしてうまく活用するっていうことは非常に難しいですが、これからの時代はしっかり考えて運用していく必要がありそうです。
終わりに
「メモリーを消すまで」 は、最近まとめ読みしてきた山田悠介作品の中でもトップクラスの面白さでした。
企業で働いているてかてんにとって、組織内の争いをテーマにした作品は、なんとなく理解できて面白いのかもしれません(笑)
内容が非常によく練られていて、登場人物ひとりひとりがどう考えてどう行動するのかが、とてもよく描かれています。
それぞれの思惑と、作戦や先方のようなものも見ごたえありです。
さらに、「メモリーを消すまでⅡ」という続編も出版されていますので、長編ストーリーとして楽しむことができます。
てかてんは、「メモリーを消すまでⅡ」も読破済みなので、近日中に書評にまとめて公開したいと思っています。
もし興味を惹かれたら、読んでみてはいかがでしょうか?
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