一冊読みきりのおすすめ小説ランキングベスト10 「2017年6月版」

 

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私は年間に100冊の本を読んでいまして、これまでかなりたくさんの本を読んできました。
 
その中には、お気に入りの本もあればちょっとつまらなかった本もあります。
 
 
ということで、
 
これまで読んでいきた本の中で「一冊読みきりのおすすめ小説ランキングベスト10」をご紹介いたします。 
 
第10位から順番に、一冊ずつ簡単な説明と書評を加えながら、第1位まで書いていきます。
 
2017年4月現在のまとめであり、てかてんの好みによって選ばれた本なので、一般的に人気のあるランキングとは異なりますのでご了承ください。
 
 
かなり長い記事になります。
最後までお付合いいただけると嬉しいです。
 
それでは、「一冊読みきりのおすすめ小説ランキングベスト10 2017年6月版」スタートしましょう。
 
 
 
 

第10位 「本を守ろうとする猫の話」 夏川 草介

 
 

本を守ろうとする猫の話

 
 
「本を守ろうとする猫の話」 
 
夏川 草介 著
 
 
「お前は、ただの物知りになりたいのか?」
夏木林太郎は、一介の高校生である。夏木書店を営む祖父と二人暮らしをしてきた。生活が一変したのは、祖父が突然亡くなってからだ。面識のなかった伯母に引き取られることになり本の整理をしていた林太郎は、書棚の奥で人間の言葉を話すトラネコと出会う。トラネコは、本を守るため林太郎の力を借りたいのだという。
痛烈痛快! センス・オブ・ワンダーに満ちた夏川版『銀河鉄道の夜』! 
 
Amazonの商品紹介ページより引用しています)
 
 
主人公の林太郎は、少し内気な少年で、趣味は古典でもなんでも読む読書。
 
そんな林太郎は、祖父と二人暮しをしてきたのだが、突然祖父がなくなってしまう。
祖父は生前、古い本屋を経営していたこともあり、林太郎は本屋の整理をすることになる。
 
突如、本屋の書棚の袖から現れた「トラネコ」が話しかけてきて、
「本を守るために協力しろ」
との申し出を受ける。
 
よくわからないまま、特に協力もしたくないまま、トラネコに連れられて不思議な世界へと迷い込んでいく。
 
 
合計4つの不思議な世界で、
 
本を閉じ込める
 
本を切りきざむ
 
本を売りさばく
 
本についてどう考えるのか
 
という4つのテーマについて考えることになる。
 
 
<感想>
 
文章は割と簡単な言葉で書かれていて読みやすい印象でした。
 
自分がどうして本を読んでいるのか?について考え直させられる一冊。
 
本はたくさん読んだということを形に残す(本を保存する)ことが良いのか。
本はすぐに読み終われるほど簡潔で、時間をかけずに読み切ることが良いのか。
本は内容はどうあれ売れる物でなければ意味はないのか。
そして、本とはあなたにとってどういうものなのか。
 
各章を読んでいくごとに、これらのことを考えさせられる内容になっています。
 
あなたにとっての本は、一体どのような位置付けなのか。
考えながら読める素敵な一冊でした。
 
 
 
以前、「本を守ろうとする猫の話」について書評していますので、合わせてお読みください。 
 
 
 
本を守ろうとする猫の話
夏川 草介
小学館
売り上げランキング: 6,721

第9位 「世界から猫が消えたなら」 川村 元気

 
 

世界から猫が消えたなら (小学館文庫)

 
 
 
川村 元気 著
 
 
 
体調不良に悩まされていたが、ただの風邪だと思っていた「僕」は医者の診察を受けた。
そして進行した脳腫瘍であると告知された。
家に戻ると、自分そっくりの容姿の「悪魔」を名乗る者が現れる。
悪魔は、「世界からひとつなにかを消すと、1日寿命が伸びる」と告げ、僕の周囲にある「物」を消し去ることを提案してくる。
そして、最初にその時たまたま使っていた「電話」をこの世界から消すことにする。
悪魔は電話を消す前に最後に1度だけ電話を使ってもいいということになり、3年前まで付き合っていた元「彼女」に電話をかけた。
 
世界から猫が消えたなら (wikipedia より引用しています)
 
 
突如、脳腫瘍であると告知される主人公。
 
そして、自分と同じ姿の「悪魔」が登場し、このままだとすぐにでも死んでしまうと告げられる。
 
悪魔からの提案は、「この世界から1つだけ物を消滅させるなら、寿命を1日伸ばすことができる」というものだった。
 
まず最初に、電話を消してしまうことになった。
 
電話が消えるとこの世の中はどうなってしまうのだろう・・・?
 
 
 
それから、日々大切なものを消さなければならないという選択に迫られていく。
 
大好きな映画、父親の生き甲斐であった時計、そして猫。
 
命と相棒という究極の選択を前にして、主人公の心の中が美しく描かれていきます。
 
 
 
<感想>
 
このような流れで、1日に1つずつ「悪魔が提案するもの」を消滅させるかどうか問われながら、生きることの大切さを感じていく主人公の心の動きがメインに描かれています。
 
主人公は猫の「キャベツ」と同居していて、唯一心を許してかわいがっている相棒のような存在です。
 
大好きだった母はすでになくなっていて、父親とは疎遠になっていたので、キャベツが心のよりどころのような状態でした。
 
自分の命を天秤にかけられ、生き延びるために最後は「猫」をこの世から消すかどうかの判断に迫られてしまいます。
 
その時の主人公の気持ちを考えると、ものすごく悲しい物語のように感じますが、全体的には1日1日素晴らしい展開になっていて、主人公の一生を一週間に凝縮したような日々を素晴らしく描いています。
 
人生について、そして1日という時間の大切さについて考える1冊です。
 
 
また、サイドストーリーとして、猫の「キャベツの目線」で描かれた「世界からボクが消えたなら」という作品もありますので、合わせてチェックしてみてください。
 
 

世界からボクが消えたなら 映画「世界から猫が消えたなら」キャベツの物語 (小学館文庫)

 
「世界からボクが消えたなら」 
 
 
世界から猫が消えたなら (小学館文庫)
川村 元気
小学館 (2014-09-18)
売り上げランキング: 10,850

第8位 「ピンクとグレー」 加藤 シゲアキ

 
 

ピンクとグレー (角川文庫)

 
 
「ピンクとグレー」
 
加藤 シゲアキ 著
 
 
ジャニーズグループ「NEWS」のメンバーである加藤シゲアキさんが手がけたデビュー作、「ピンクとグレー」。
 
アイドルをしながら、小説を書いていたなんてつゆ知らず。
 
「ジャニーズが書いた小説なんて・・・」って思っている人がいるとしたら、そこは作品を読んでから判断してください!と声を大にして言いたくなるほど、作品としてとても素晴らしいものでした。
 
 
内容は、2人の男の子が一緒に成長していく過程を描いていて、高校時代2人で「読者モデルの世界」に入っていき、主人公はそれほど知名度が上がらなかったけれど、親友はどんどん力をつけて行ってしまい、次第に2人の間に溝ができて行ってしまいます。
 
主人公は、うだつが上がらない状態のまま、エキストラの仕事を続けていくのですが、親友は連続ドラマの主演になってしまい、一躍有名人となっていきます。
 
主人公は親友に嫉妬して喧嘩になり、親友はそんな状態で売れようとも努力しない主人公にイライラして喧嘩になり・・・という感じで互いに避け合うようになるのです。
 
月日が流れて再開した2人は、朝まで飲み明かし、互いの現状を話し合うのですが、次の日突如として有名になった親友が「6つの遺書」を残して自殺してしまいます。
 
第一発見者となった主人公は、6つの遺書の中から1つを選び出し、その遺書を世間に公開することで「イケメン親友登場」といった感じで次第に有名になり始めます。
 
そして、親友の死の真相を語ったノンフィクション書籍で一躍有名になり、すべて忠実に再現することを条件に、親友の役を演じる「ノンフィクション映画」をとることになっていきます。
 
映画を作る過程で、徐々にわかってきた親友のたどってきた道のりや考えに触れながら、主人公は何を考えるのか。
 
 
 
<感想>
 
 
何となくですが、加藤シゲアキさんが感じている「芸能界」が「ピンクとグレー」の物語の中に現れているように感じました。
 
芸能界といえば、光り輝いた素晴らしい舞台のように思えますが、その裏では「ピンクとグレー」の主人公のように迷いや葛藤があり、親友に向けて感じていたような嫉妬があったりするのだと。
 
表向きで見られているきらびやかな姿の裏には、こうした悩みが葛藤があるなんて、よく考えると当たり前のことなんですが、私たちは芸能界の良いところしか見えていないのかもしれませんね。
 
そんな意味でも、小説の物語として純粋に面白いだけでなく、普段考えない舞台裏のようなところも垣間見える素敵な作品でした。
 
何より、ジャニーズとして活躍しながらも、こんな作品を書いている加藤シゲアキという1人の人間に興味が湧きました(笑)
 
 
 
以前、「ピンクとグレー」について書評した記事がありますので、合わせてお読みください。
 
 
 
ピンクとグレー (角川文庫)
加藤 シゲアキ
KADOKAWA/角川書店 (2014-02-25)
売り上げランキング: 74,580
 
 
 
 

第7位 「ちょっと今から仕事やめてくる」 北川 恵海

 
 

ちょっと今から仕事やめてくる (メディアワークス文庫)

 
 
「ちょっと今から仕事やめてくる」
 
北川 恵海 著 
 
 
毎日好きでもない仕事をして、しかも残業ばかりで帰りは終電になってばかり。
 
帰って寝て、また朝早くから仕事をしなければないない。
 
主人公は、もうすでに限界を超えている状態だった。
 
ブラック企業で無理な労働を強いられて、自分のしたいことなんて一切できない。
駅のホームでそんなことを考えているとき、ちょうどホームに入ってきた電車に向かって飛び込んでしまっていたらしい。
 
その時、主人公の手をグッと掴んで自殺を食い止めてくれた人がいた。
ヤマモトと名乗る男が、助けてくれたのだ。
 
それからは、何かあるたびにヤマモトと二人で飲んで語り明かし、主人公の心の支えであり大切な親友になっていく。
 
仕事も少しずつ結果がでるようになり、大きな案件が任されるようになるのだが、そんな順調に進みつつある主人公に危険が迫る・・・
 
 
突如助けてくれた「ヤマモト」とは何者なのか?
「タイトルにある、今から仕事辞めてくる」に秘められた意味とは?
 
読んでいくと共感できて、最後はスカッとできる働くサラリーマンの応援小説みたいな物語になっています。
 
 
 
 
<感想>
 
 タイトルでビビッ!ときて、すぐに購入した一冊です。
 
働くサラリーマンなら、一度は必ず思ったことがあると思います。
 
「仕事したくない、やめてやる!」みたいなことですね(笑)
 
だからこそ、タイトルを見てすぐに共感できるし、興味を惹かれてしまうんですよね。
 
ヤマモトと飲みながら語り合う場面が多いのですが、そうしたシーンも仕事の同僚や学生時代の友人と飲み交わすことにも似ていて共感できます。
 
このように、自分の生活に照らし合わせながらスッと読めていくところが、「ちょっと今から仕事やめてくる」の魅力なのかもしれません。
 
難しい表現も少なく、文章も読みやすいので、気になった方はぜひ読んでみてください。
 
 
過去に「ちょっと今から仕事やめてくる」に関して書評したことがあるので、よろしければあわせてお読みください。
 
 
 
 
 
 
 
 

第6位 「危険なビーナス」 東野 圭吾

 
 

危険なビーナス

 
 
「危険なビーナス」
 
東野 圭吾 著 
 
 
獣医として日々働いていた伯郎の元に、一本の電話が入った。
 
相手は、矢神楓と名乗り、伯郎の弟である秋人の妻だと言い出した。
 
とはいえ、伯郎はもうかなり長いこと秋人とは会っておらず、連絡すら取り合っていなかったので、全く結婚の事実を知らなかったのだ。
 
そして楓は、「秋人くんが失踪したんです。一緒に探してくれませんか?」と打診する。
 
やや強引に協力させられることになった弟の捜索だが、美人で明るく気の利く性格だった楓に、伯郎は徐々に惹かれていってしまう。
 
果たして、失踪した秋人はどこにいったのか?
楓に想いを寄せ始める伯郎は、どうしていくのか?
 
 
 
 
<感想>
 
 
さすが東野圭吾さんだと感じた一冊でした。
ページ数は386ページもあり、ボリュームのある一冊なのですが、それでも一気に読み切れる面白さと飽きのない展開でした。
 
続きが気になってつい読んでしまうような構成と文章力には、驚きです!
 
危険なビーナスは、弟の失踪とその捜索、名家である実家とのかかわり、そして楓との関係性をメインに描いています。
 
テインテーマは失踪した秋人の捜索なのですが、伯郎が人生で久しぶりの恋を抱く楓との駆け引き的なものを描いた「片想いの恋愛作品」のようでもあり、楽しめました。
 
 
 
危険なビーナス
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東野 圭吾
講談社 (2016-08-26)
売り上げランキング: 10,060
 
 
 

第5位 「火花」  又吉 直樹

 
 

火花 (文春文庫)

 
 
「火花」
 
又吉 直樹 著
 
 
ある二人のお笑い芸人を描いた物語。
 
天才であり、人当たりも良く面倒見も良い先輩芸人の神谷と、神谷を師匠として慕う後輩芸人の徳永。
 
お笑いとは?という、お笑い芸人にとって重大テーマをネタに、いつもお酒を飲み交わしていた。
 
そしてある時、神谷は徳永に「俺の伝記を書け」と命じる。
 
互いの道を歩む二人と、芸人としての生き方を描いた、素敵な物語。
 
 
 
<感想>
 
 
お笑い芸人「ピースの又吉さん」が発表した作品。
 
元々、かなりの読書家だというだけあって、ライトな小説ではなくしっかりとした文学作品として仕上がっています。
 
文学作品というと、難しい言葉が並んだり、古典文学のようなものをイメージしたりしますよね。
 
文字どおり、文学作品は「読書家」が読んでも難しいものは難しいし、読み切れないものは読み切れません(笑)
 
でも、火花は今ブームの「お笑い芸人」をテーマにした文学作品なので、多くの人にも読みやすく、愛されやすい作品となっています。
 
発売当初はなかなか手に入らないほどの人気ぶりでしたが、現在ではわりと落ち着いて手に入るようになっているので、まだ読んでない方はチャンスです。
 
てかてんも、久しぶりに発売済みの本を書店で予約してまで手に入れた一冊でした。
 
 
 
 
火花 (文春文庫)
火花 (文春文庫)

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又吉 直樹
文藝春秋 (2017-02-10)
売り上げランキング: 228
 
 
 

第4位 「コンビニ人間」 村田 沙耶香

 

コンビニ人間

 
 
 
村田 沙耶香 著
 
 
 
 第155回、芥川賞受賞作。
 
コンビニで生きていくことを選んだ、ちょっと変わった女性、古倉恵子の話。
 
大学を卒業し、就職もせず、結婚もしないまま、コンビニで働き続ける彼女を見て、同僚からは「なんで結婚しないの?」「その歳でまだコンビニで働き続けるの?」と言った疑問を投げかけられる。
 
しかし彼女は、「コンビニこそ自分の居場所なんだ」と違和感もなく同じ生活を続ける。
 
彼女の中では、コンビニが全てで、コンビニでの生活に何も不満がないのだ。
 
むしろ、コンビニでみるいつもの風景、常連さん、「いらっしゃいませ!」の掛け声なんかが、恵子の癒しでもあった。
 
そんなある日、白羽という新入りの男性バイトスタッフがコンビニに勤めることになった。
 
白羽から、「あなたは普通じゃない」と言われるのだが、果たして「普通」とは一体何なのだろうか。
 
あなたの当たり前や、あなたの普通が、果たして他の人にも当たり前であり普通なのか?
 
哲学的な問いが、大きなテーマとなって流れてくる。
 
 
 
 
<感想>
 
 
斬新な設定と世界観で、引き込まれる作品でした。
 
コンビニという私達には無くてはならない物がテーマで、アルバイトを続けている人が普通なのか普通じゃないのか?という問いかけがなされています。
 
一般的には、就職して会社で定年退職まで働きながら、結婚して子育てすることが「普通」と捉えられがちですが、果たして「普通」ってなんなのでしょうか。
 
てかてんが普通だ、当たり前だと思っていることが、周囲の人にとっても共通認識であるとは限りません。
 
「普通」というのは、その人の価値観によって変わってくるものですし、それを互いに押し付けあうことは間違っていると思います。
 
世間一般で見て、割合が多いものを「普通」と捉えることが多いですが、あくまで割合が多いというだけで、すべての人にとって「普通」ではない。
 
なんだか色々なことを考えさせられる作品でした。
 
 
 
 
コンビニ人間
コンビニ人間

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村田 沙耶香
文藝春秋
売り上げランキング: 275
 

第3位 「三日間の幸福」 三秋 縋

 
 

三日間の幸福<三日間の幸福> (メディアワークス文庫)

 
 
「三日間の幸福」
 
 
三秋 縋 著 
 
  
「寿命を買い取ってもらった。一年につき、一万円で。」
 
何も良いことがない人生に嫌気がさしたクスノキは、寿命を買い取ってもらえるという不思議な店で、残りの寿命の大半を売ることにした。
 
その金額が、一年につき一万円。
 
未来に希望がなく、大半の人生を売ってしまったクスノキは、残り僅かな時間だけは幸せに生きたいと行動する。
 
しかしどれもうまくはいかなかった。
 
さらに、寿命を売った人間には、四六時中付いて回る「監視員」がつくことになっている。
 
クスノキの監視員は、ミヤギという女だった。
 
ミヤギは、人生を売ってしまい、自分の人生の最後の日がわかっている人間が、自暴自棄になって大きな犯罪などを起こしてしまわないように監視する役割を担っている。
 
徐々に少なくなっていく寿命の中で、最後の3日間にかけた幸せとは?
 
 
 
<感想>
 
 自分の人生を売る。
 
そんなことを考えたことはなかったのですが、もしも自分の人生を売ることができるのなら、一体いくらなら売るでしょうか?
 
サラリーマンの生涯年収から換算し、20歳から60歳までの40年間で2億円稼ぐとして、1年あたり500万だったら売るでしょうか。
 
自分の人生の価値を「お金」で表現することが果たして可能なのでしょうか。
 
なんだか色々なことを考えてしまう作品でした。
 
きっと、てかてんなら1年に付き1000万円もらえるのだとしても、売ることはないでしょう。
 
1年を1000万円で売れば、生涯サラリーマンとして働いても得られないお金が手に入りますが、その間に経験するはずだった仕事のキャリアや旅行・読書などの趣味、友人や家族と過ごす時間や思い出などを考えると、1000万円では全然足りません。
 
人生の1年間は、お金で換算できる部分よりも、お金では表現できない部分の方が圧倒的に多い。
 
だからこそ、お金も大切だけれど、体験や思い出をしっかりと味わえるような人生にしていきたいですね。
 
 
以前書いた「三日間の幸福」に関する書評記事です。
なぜか今でも継続してアクセスが多く、たくさんの方に読んでいただけている記事です。
 
 
 
 
 

第2位 か「」く「」し「」ご「」と「 住野 よる

 
 

か「」く「」し「」ご「」と「

 
か「」く「」し「」ご「」と
 
住野 よる 著
 
 
突如現れた期待の小説家「住野よる」さんの4作目にあたる作品。
 
5人の高校生が紡ぐ、それぞれの「かくしごと」をテーマにした青春小説。
 
 
 
地味で引っ込み思案だからこそ、言いたいことがあまり言えない男の子「京くん」
 
運動神経抜群で明るい性格。クラスでは大人気の「王子様」タイプの男の子「ヅカ」
 
ヒロインよりもヒーローになりたい。明るくて可愛らしい女の子「ミッキー」
 
パッパラパーで何を考えているかわからないけれど、実は真面目な女の子「パラ」
 
内気で控えめだけれど、自分の意見はしっかり持っている女の子「エル」
 
 
1章ごとに各キャラクターの視点で5人の学校生活が描かれる。
 
一人ひとり違った特殊な能力を持っていて、「相手の喜怒哀楽がわかる力」や「この人の気持ちが誰に向いているのかわかる力」など、様々。
 
そんな特殊な力があることは皆黙っていて、自分の気持ちや特殊能力でわかる周りのメンバーの気持ちなどを隠しながら、互いを探り合うように物語が進んでいく。
 
 
みんなは知らない、
ちょっとだけ特別なちから。
そのせいで、君のことが
気になって仕方ないんだ
 
(か「」く「」し「」ご「」と「 の帯に書かれた一文より引用しています)
 
 
 
<感想>
 
学生時代、男女数名のメンバーで青春を謳歌する。
なんだかほっこりしながら読み進められる一冊でした。
 
5人の男女メンバーで、互いに好意を寄せる相手がいる状態なんて、「青春だなー」としみじみ感じますよね。
 
しかも、それぞれが人の気持ちを部分的に理解する能力を持っていて、その能力があるがためにモジモジしてしまう感じが、読んでいてたまらなかった感じです。
 
一人ひとりの視点で物語が描かれているところもいいですね。
青春小説の場合、主人公1人の視点だけで全てが描かれているよりも、それぞれの気持ちをうまく読み取るためにもみんなの視点があると読みやすく感じます。
 
1章ごとに違ったキャラクターが主人公になるわけですから、文章の書き口も変わっていて、飽きずに読めます。
 
キャラクターもいい感じのバランスで、本の表紙と帯の裏側にキャラクターの挿絵があるのですが、可愛らしく描かれていて「デザインで思わず購入」みたいな人もいるかもしれません。
 
この本は、何度か読み返してしまいそうです。
 
 
 
か「」く「」し「」ご「」と「
住野 よる
新潮社
売り上げランキング: 472

第1位 「君の膵臓を食べたい」 住野 よる

 

君の膵臓をたべたい

 
「君の膵臓を食べたい」
 
住野 よる 著 
 
 
栄えある第1位は、第2位と同じく「住野よる」さんの作品です。
 
「君の膵臓を食べたい」は住野さんの1作目の作品で、読書メーターで大人気になった後、本として出版され大ブレイクのきっかけにもなりました。
 
漫画バージョンや文庫化、そして実写映画化もされるほど爆発的な人気となった作品です!
 
 
 
僕は、ある時「山内桜良」が記していた「共病文庫」という名の日記帳を拾ってしまった。
 
そしてそこに記された内容を見て、僕は「山内桜良」が秘密にしていた彼女の病気について知ることになる。
 
まだ友達には話していないということで、二人の秘密ができてしまったのだ。
 
その日から、桜良はことある頃に僕を誘ってくるようになった。
秘密を共有した仲間だからだろうか、素の自分が出せることを喜ぶかのように、時を共に過ごしていった。
 
一緒のバイキングに行ったり、図書室で本を読んだり、九州に旅行に行ったりもした。
 
そうして二人で過ごすうちに、僕が桜良に抱く気持ちも変わっていく。
 
 
頭が良くてどこか捻くれているような内気な僕と、正反対に明るく人生を全力で楽しんでいる桜良が描く、青春でありどこか切ない物語。
 
桜良の病気はどうなるのか。
そして僕の桜良に対する気持ちはどう整理していくのか。
 
最後の最後まで感動できる一冊です。
 
 
 
<感想>
 
 
タイトルだけみると、「なんだこの作品」って思っちゃいますけど、そのキャッチーさが魅力の一つなんです。
 
主人公の「僕」は頭が良いひねくれ者みたいな感じの男の子なんですが、ヒロインの桜良が膵臓病であり、その病気に対して自分が何をしてあげたらいいかわからないんです。
 
それで、「大丈夫!」とか「何とかなるよ!」みたいな無責任なことは言いたくなくて、「君の膵臓を食べちゃって、病気なんか治してあげたい」みたいなニュアンスでつぶやく作中の言葉が「君の膵臓を食べたい」なんですね。
 
いかにも「僕」らしいし、桜良のことを真剣に考えた末に出てきた名言で、「君の膵臓を食べたい」を最後まで読んだことがある人は、きっと「僕」の気持ちに共感できると思います。
 
また、「君の膵臓を食べたい」では「僕」も桜良も比較的頭の良いキャラクターとして描かれているので、彼らの言葉遊びも魅力の一つです。
 
お互いに皮肉を言い合っていたり、返事の一つひとつにとんちが効いているような言い回しが出てきて面白いですね。
 
年間ベストセラーになった作品ですし、冒頭でも書いたように漫画の発売や文庫化、実写映画化なども進められているほどの作品ですので、小説でも漫画でも映画でもいいのでどれかひとつだけでも多くの人に見て欲しいと思います。
 
 今の所、てかてんは小説のみしか読んでいないのですが、ハードカバーでもう一度読み返すならちゃんと文庫版を購入して読んでみようかなーと思っています。
 
 
 
君の膵臓をたべたい
君の膵臓をたべたい

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双葉社
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以前、「自分の生き方に影響を与えたおすすめビジネス本ランキングベスト10」という記事を書いたことがあるのですが、ビジネス本についてランキングをつけるよりも、小説でランキングをつける方が難しかったし、とても大変でした(笑)

 

  

tekaten.hatenablog.jp

 

小説の場合、ストーリーについても書きたいし、その中でキャラクターや面白かったシーンについても感想を書きたいのですが、すべて書いていたらうまくまとめることが難しかったりもします。

 

小説の書評そのものも、結構書くことが難しいなと感じていますので、それを順位付けしてまとめるというのは一苦労でした。

 

しかし、書いてみて「やっぱりこの小説面白いよなー」と一冊ずつ振り返りながらかけたのは、楽しかったですね。

 

書評ランキングをつけるためにさらっと読み返したりしながら、しみじみ「小説っていいなー」と思いました。

 

 

「ベスト10」とすると、今回のように一冊あたりの書評文量も多く、ボリュームのあるランキング記事になります。

 

半年に1回とかのペースで、「小説ベスト10」とか「ビジネス本ベスト10」とかをまとめて書いていきたいなーと思っています。

 

それだけではなくて、「50冊まとめて書評!」のような1記事を流しながら読むだけで、50冊の本の情報が手に入るような記事も書いてみたいと思います。

 

「50冊まとめて書評」とすれば、一冊あたりはほんのちょっとの書評になりますが、ビビッときた本を数冊ピックアップするなんていう読み方がしていただける記事にできると思います。

 

これまで大量に本を読んできたので、読んできた数を活かせるような「便利なまとめ記事」を書いていきます。

 

 

長い記事になりましたが、最後まで読んでいただいた方、ありがとうございました。

 

このランキングは、てかてんの好みをランキング付けしたものですが、読者のあなたには「ピンとくる本」や「読んでみよう!と思った本」はありましたでしょうか?

 

この記事から本を見つけ、そしてその本を読んで楽しめた!という方がもしいらっしゃれば、コメントいただきたいと思います。

 

 

 

 

 

 

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