「社会を変える」を仕事にする:社会起業家という生き方
駒崎 弘樹 著
元ITベンチャー経営者が、東京の下町で始めた「病児保育サービス」が全国に拡大。「自分たちの街を変える」それが「世の中を変える」ことにつながった。汗と涙と笑いにあふれた、感動の社会変革リアル・ストーリー。
(Amazonの商品紹介ページより引用)
社会起業家として、東京でスタートさせた「病児保育サービス」をどのようにして作り上げ、世の中へと広げていったのかをまとめたビジネス本。
社会を、そして世の中を変えていくことの難しさを非常にわかりやすくまとめられていて、「起業」にはものすごいエネルギーが必要なんだなと再認識しました。
起業は、取り組むビジネスや規模によっても成功ノウハウが異なるものだと思いますし、たとえその人が成功できたからといって再現性があるものでもないと思っています。
そこで、「社会を変えるを仕事にする」からは、「世の中に変化を作る難しさ」と「そもそも起業を行う理由について」というトピックで、本書の引用文を加えながら考えていきます。
今回のトピックはこちら!
世の中に変化を作る難しさ
そもそも起業を行う理由ってなんだろう?
溺れる赤ん坊のメタファー
終わりに
世の中に変化を作る難しさ
世の中に変化を作るというと、ものすごく大きなことをしているように感じます。
私としては、全く想像できないほどの大きさなので、いまいちイメージがつきません。
そこで、小さなこと、例えば会社でちょっとしたルールを変えることを考えてみましょう。
職場がなかなか片付かないことに気がつき、昼休み明けの5分間は、社員全員が掃除をするようにルールを変えれば、積み重ねで職場が綺麗になるのではないか。
もちろん、絶対に職場が綺麗になることは間違いありません。
でも、このルールを会社の新しいルールとして他の社員に浸透させるのは、並大抵の努力では達成できません。
このように考えると、会社内だけでなく「社会や世の中」を変えていく力は、もっと莫大な力が必要になることは言うまでもありません。
そもそも、人間とは「変化を嫌う生き物」であるとも言えます。
今までこういうルールだったのに、なんで変えなきゃいけないの?
こんなことを言う人が、たっくさん出てくるはずですよね。
同じ職場や会社の中でも反発だらけなのですから、いきなり社会起業家が現れて、「こんな風に変えたほうがいいですよ」なんて言われても、簡単に言うことを聞きません。
と言うよりは、言うことを聞く以前に、話すら聞いてもらえないでしょう。
同じ価値観の人間が集うばかりで自分たちとは違うアイデアを許容しないから、新しい動きも起こらない。
(「社会を変えるを仕事にする」より引用しています。)
「社会を変えるを仕事にする」では、「病児保育」の現場で社会起業に成功したお話をまとめられています。
保育の現場にいる人に対して、見ず知らずの社会起業家が突然現れてアドバイスされても、話すら聞く気になりません。
前述の引用にある通り、社会起業家は「なんで新しいアイディアを受け入れようともしてくれないんだ」と思い、現場は「なんでこんな奴の言うこと聞かなならんのか」と思うのです。
結果として、話は進みませんし、お互いが警戒し合うだけの関係になっちゃいます。
最初は、お互いを知ること、そして理解しあって信頼できる関係になることが大切なのです。
こうした信頼を得る上で、社会起業家は、
「考えるときは頭のなかだけで考えてはいけない。必ず手も一緒に動かすことだ」
(「社会を変えるを仕事にする」より引用しています。)
このような考え方が必要です。
つまり、理論やネタばかりを情報として考えるばかりでなく、絶対に行動も行うこと。
行動からしか得られないものだってたくさんありますし、考えていた頃とはまた別の問題が出てきたりもするからです。
最初の例にもあげた、会社のちょっとしたルールを変える場合でも同じです。
考えるだけでなく、アイディアを提供するだけでなく、まずは自分自身が5分間清掃を行ってみる。
そしてたった5分の掃除が、繰り返していくとどんなに綺麗になるのかを実際に見せたり、昼休み明けの掃除をルールにすることで発生する問題を実際の行動で見つけてみたりする。
そうすれば、身近な人たちが「俺たちもやってみようか」と、次第に広がっていくきっかけになるかもしれません。
話は長くなりましたが、結局は「物事を変えていくことというのは、ものすごくエネルギーが必要だ」ということです。
そもそも起業を行う理由ってなんだろう?
話は少しそれていくのですが、そもそも起業家が「起業を行う理由ってなんだろう?」と思ったのでまとめてみます。
起業を行う理由としては、
「自分で仕事を作り出して、世の中に貢献したい」
という気持ちから新しい事業を作り出すものです。
その先に、自分で会社を運営したいとか、もっと収入を増やしたいとかが付いてくるものなのではないでしょうか。
「社会を変えるを仕事にする」からも言葉を借りると、
ビジネスというのは本来、手段であるはずだ。目的は、誰かが満足したり、足りないところが埋まったり、困っていることが解消されたり、そういったことではないだろうか。
(「社会を変えるを仕事にする」より引用しています。)
やっぱり、起業やその他のビジネスにとっても、まず先立つものは「何かを良くしたい」という貢献の気持ちなのではないでしょうか。
ここを履き違えて、 お金が欲しいから起業するという風になってしまうと、お金をより稼げる手段から考えるようになってしまい、結果的にお客様がつかなかったりするわけですよね。
お金を稼ごうとしていることがお客様に見透かされてしまい、ビジネスとして成功するとは難しくなります。
世の中のあらゆる仕事は、どんな形であれ、どこかの誰かを助けるものであるからこそ、お客様から求められるのです。
溺れる赤ん坊のメタファー
起業やビジネスなど、何か仕事を行う上で「何かを良くしたい」という心から発展していくものだとお話ししましたが、もう一つ知っておくべきことがあります。
それが、「溺れる赤ん坊のメタファー」と呼ばれる寓話です。
あなたは旅人だ。旅の途中、川に通りかかると、赤ん坊が溺れているのを発見する。
あなたは急いで川に飛び込み、必死の思いで赤ん坊を助け出し、岸に戻る。
安心してうしろを振り返ると、なんと、赤ん坊がもう一人、川で溺れている。急いでその赤ん坊も助け出すと、さらに川の向こうで赤ん坊が溺れている。そのうちあなたは、目の前で溺れている赤ん坊を助けることに忙しくなり、実は川の上流で、一人の男が赤ん坊を次々と川に投げ込んでいることには、全く気づかない。
(「社会を変えるを仕事にする」より引用しています。)
このお話で言いたいことは、目の前の問題をただただ解決しているだけでは、物事の本質まで見えていないのではないか?と疑うことの大切さです。
目の前の赤ん坊を助けることは、いますぐやるべき仕事です。
しかし、なぜ赤ん坊が溺れているのか?という根本的問題を解決しない限り、ずっと赤ん坊を助け続ける仕事になる。
もっと広い目を持ち、原因を徹底的に探していくことで「赤ん坊を放り投げている本当の問題」というところにたどり着けば、その後は赤ん坊を川の中まで助けに行かなくても、赤ん坊が溺れることはありません。
本当の問題は何か?本当に求められていることは何か?
このような真の問題を見つける力も、仕事を進める上では大変重要なスキルとなります。
前述の、会社のルールを変えるという例でも同じです。
毎日5分間の掃除時間をルール化することができれば、職場を綺麗にするという目的は果たすことができるかもしれません。
でも、みんなが毎日5分間掃除し続けなければ、綺麗な職場は維持できません。
本当は、出したものは必ず片付けるとか、いらないものを取っておかず、常に捨てる癖をつけるといった、根本的な問題を解決する方が理想的なのかもしれません。
どんな問題でも、「本当はもっと根本的な問題があるのではないか?」と疑う目を持ってみてください。
終わりに
社会起業家って、なかなか身近にいるものではありませんし、何をする人たちのことを表しているのか知る機会も少ないです。
自分とは無縁の世界の人だから、知らなくても良いという意見も多数ありそうですね。
でも考えてみてください。
世の中の新しいサービスなんかは、これまで誰かが問題だ!と注目して、より良い方法へと変化させてきているのです。
日頃自分たちが利用しているサービスや商品も、過去に社会起業家の誰かが問題と見て取り組んでくれたビジネスだったりします。
だとしたら、自分とは全く無縁、とまでは言えませんよね。
この本の物語を通して、「社会起業家って本当に大変そうだな・・・・」と知るだけでも、ちょっと世の中の見方が変わってきそうです。
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