【書評】「優しい死神の飼い方」(知念実希人)犬に入り込んだ優しい死神が人間を救う

 

優しい死神の飼い方 (光文社文庫)

 

「優しい死神の飼い方」

知念 実希人 著

 

こんにちは、てかてん(@tekaten)です。

 

「医者でありながら、作家」というとんでもない経歴を見て、

「この人はとんでもなく頭が良くて、描く物語も素晴らしいに違いない!」

 

しかも、なかなか世の中にいない職業の組み合わせですよね。

理系の極みと、文系の極みが融合したような職歴に心が震えました。

 

知念さんとの出会いは、こんな感じの衝撃でした。

やはり思った通り、知念さんのどの作品を読んでも「面白い!」と感じるので、今注目の作家さんですね。

 

それでは、そんな医療ミステリー作家の知念さんが描く、「優しい死神」のハートフルストーリーの書評に移ります。

 

今回のトピックはこちら!

 


  • 「優しい死神」が犬に入り込んで人間を救おうとする

  • こんな人におすすめ! 
  • 知念作品は医療の知識が満載でキャラクターが光る
  • 終わりに
  •  

     

    「優しい死神」が犬に入り込んで人間を救おうとする

     

    少し設定がアニメよりではありますが、こんな物語は素敵だなーと思わせてくれる一冊でした。

     

    死神として地上に降り立ち、人間のお世話をする。

    死神の実態は無いので、生きている「生き物」に乗り移って行動するしかありません。

    そこで「とある動物」に乗り移ったのですが、運悪く生き倒れ寸前の「ゴールデンレトリバー」でした。

     

    乗り移ったが最後、そのまま死んじゃうんじゃないかと思ったそのとき、ひとりの女性がその命を救ってくれました。

    「死神なのに、いきなり死にそうになるし、むしろ命を救われる」

    というなんともトンチンカンなところから物語が走り始めます。

     

    登場人物

     

    ゴールデンレトリバーに入り込んだ死神「レオ」

     

    人間界で活動するための器「ゴールデンレトリバー」の中に入り込んだ死神。

    生き倒れ寸前のところを救ってくれた「菜穂」に「レオ」と名付けられる。

     

    レオのお世話係の「朝比奈 菜穂」

     

    丘の上のホスピスに勤める女性。

    ホスピスの近くで生き倒れ寸前のゴールデンレトリバーを救い出し、レオと名付けてホスピスで面倒を見ることに。

    レオのお世話係りもやっている。

     

    「死神」なのに「心優しい」というギャップ

     

    死神と聞くと、一般的にはとても恐ろしい姿で、人の命を刈り取る恐怖の存在を想像しますよね。

    ガイコツのような顔つきで、破れたローブを頭から被り、命を刈り取る鎌を持つ。

    まさに、皆さんのイメージと一致していると思います。

     

    でも、この物語に登場する死神は、そんな私たちがイメージする死神とは全く違います。

     

    優しい死神は、人間の寿命がわかります。

    そして、その寿命に近い人たちのもとへ現れて、「やり残したこと」「心残りなこと」を解消することがお仕事です。

    未練を残してこの世を去ると、地縛霊になってしまうかもしれないので、生きているうちに未練を解消するお手伝いをするという設定ですね。

     

    しかし、優しい死神には実態がないので、人間に受け入れられやすい、近づきやすい姿で登場し、未練解消のお手伝いをするのです。

     

    心優しく、ちょっと「おっちょこちょい」なところもある「優しい死神」が、なんとかして未練を見つけ出し、解決に導くという暖かいストーリーです。

     

    感動できる「ハートフルミステリー」

     

    人々の未練には、いろんな形があります。

    命の終わりを意識し始めると、いろんなことを思い出し、やり残したことや心残りなことが見えてき始めます。

    そこには、愛した人に伝えたい最後の言葉や、決別して思いだけが残った相手など、

    人によって様々です。

     

    ホスピスに入った人たちには、そんなどうしようもない強い想いがたくさん残っているのです。

     

    ゴールデンレトリバーの姿になった死神は、どんなことで想い悩んでいるのか、まず心を開こうとするところから始まります。

    そして、掴んだ心の隙間を埋めるべく、必死に走り回ってお手伝いをしていきます。

     

    一人ひとりに秘められたエピソードと、それを解決していくうちに「人間に惚れ込んでいく優しい死神」の気持ちの変化に、感動していくことは間違い無しです。

     

     

    こんな人におすすめ! 

     

    「優しい死神の飼い方」はこんな人におすすめしています!

    ◯ 感動したい人

    ◯ キャラクターが映える作品が好きな人

    ◯ 動物、特に犬が好きな人

     

    ひとつずつ解説していきますね。

     

    感動したい人

     

    まずは小説を読んで感動したい人におすすめです。

    「お涙頂戴」的な物語は苦手だけど、感動して心を洗いたい。そんな人におすすめ。

    キャラクターの必死の思いや行動、ひたむきな姿で感動できる作品なので、人と人の繋がりや、誰かのためにという強い想いが心を動かしてくれる物語になっています。

     

    優しい死神に心を洗ってもらいましょう。

     

    キャラクターが映える作品が好きな人

     

    キャラクターに個性があって、一人ひとりをしっかり描いた「キャラクター映えする作品」って素敵ですよね。

     

    「優しい死神の飼い方」も、そんなキャラクター映えする作品の一つです。

    登場するキャラクターは少ないながらも、一人ひとりにしっかり個性があり、愛着が湧いていきます。

     

    特に、主人公のレオこと「優しい死神」さん。

    死神なのに、優しくてちょっと抜けたところがある可愛らしさは、人気になること間違い無し。

    キャラクターが映える作品が好きな方にはおすすめです。

     

    動物、特に犬が好きな人

     

    動物が好きな人にもおすすめです。

    特に犬が好きで、ゴールデンレトリバーが好きならなお良いですね。

     

    なぜかというと、

    死神が乗り移ったゴールデンレトリバーのレオは、意識や思考はすべて死神のコントロールにあるのですが、反応は犬のままだからです。

    食べ物を目の前にするとよだれダラダラになったり、疲れていつものスペースでお昼寝したり、ゴールデンレトリバーの一面も楽しめます。

     

    また、「人と犬の関係」がよく表現された作品に仕上がっていますので、犬を飼われている方にもお楽しみいただけると思います。

     

    知念作品は医療の知識が満載でキャラクターが光る

     

    知念実希人さんの作品は、医療の知識が豊富で、ミステリーとしても非常に楽しめるものが多いです。

    まさに「本格医療ミステリー」といったところ。

     

    現役のお医者様ということもあり、医療現場の様子をリアルに描いたり、医者目線、患者さん目線の表現では群を抜いています。

     

    知念実希人さんの作品をいくつか読んでいくと、医療に関する知識がどんどん身についていくので、

    医療現場を舞台にしたドラマなんかを楽しめる基礎知識が自然と身につきます。

     

    医療現場を舞台にしたドラマは、1年の中でよく見かけますので、ドラマを楽しみたい人にとってもおすすめできますね。

     

     

    医療の知識が溢れているけれど、難しすぎず勉強になる

     

    そんな「本業」としての医療知識が満載の知念実希人さん作品ですが、

    文章表現が非常に上手いからこそ「難しすぎない」ところも良いポイントです。

     

    医療では専門的な用語が多く、理解することが難しいのですが、

    そこをわかりやすい文章力でカバーしてくれています。

     

    しかも、いろんな作品を通して「同じ症状」や「同じ薬の成分」「同じ処置方法」などが登場するため、

    読む中で自然と覚えてしまえるところも良いですね。

    医療の知識をひけらかすわけではなく、読者が親しみ易いように書いてくれているところに、知念実希人さんの「書く力」が現れています。

     

     

    一人ひとりのキャラクターが光っている

     

    私にとって何よりおすすめのポイントが、

    「一人ひとりのキャラクターが光っている」

    というところです。

     

    やはり小説では、登場するキャラクターが活きていないと面白く感じられません。

    たくさんのキャラクターが登場するほど、一人ひとりの理解が追いつかず、物語そのものを楽しむことができません。

    とは言いつつも、登場キャラクターが少なすぎると、細かい心理描写や人間関係の構図を描くことができなくなるので、こちらも面白く感じられない。

    とても絶妙で、小説の難しさだと思っています。

     

    しかし知念実希人さんの作品は、登場人物も少なすぎず、しかも一人ひとりのキャラクターが引き立っていて「キャラクターが光っている」と感じられます。

     

    キャラクターに愛着が湧き、シリーズものなら「続編が読みたくなる」ようにファンをアシストしてくれます。

     

    こんなところも総合すると、本当におすすめできる作家さんですね。

     

     

    終わりに

     

    「優しい死神の飼い方」はおすすめ度が非常に高い作品です。

     

    「優しい死神シリーズ」として、「黒猫の小夜曲」という作品もリリースされているので、

    シリーズものを好まれる方にもぜひ読んでいただきたいですね。

     

    新しい作家さんを発掘したい!と思っている方は、ぜひ知念実希人さんの本を読んでみてください。

    作品数もかなりの数に上るので、飽きなく読書を楽しめると思います。

     

    今日も、てかてんの書斎に遊びに来てくれてありがとうございました。

     

    では、また。

     

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    光文社 (2016-05-12)
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