ゆとり世代の退職理由ランキングを一つひとつ考察してみよう

 

 

 

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 就職・転職などに関するリサーチ会社「VORKERS:ヴォーカーズ」では、様々な業界、企業の情報をリサーチして分析されている会社です。働き方、働く人達の気持ちなどを調査する際に、よく参考にさせていただいているのですが、その中で興味深いランキングを発見しました。

 
 今回、「平成生まれの退職理由」と題して、10位までの退職理由についてランキングが発表されました。このランキングを見る限り、平成生まれ、いわゆる「ゆとり世代の人達」がどのような理由で退職を選んでいるのかが見て取れます。
 
 このエントリでは、VORKERS出典の「平成生まれの退職理由ランキング」を元に、各順位に挙げられた退職理由と、企業で働く中で感じる現状を照らし合わせながら、考察していきたいと思います。
 
 
関連記事として、「この時期話題にあがる新入社員の退職について考えてみた」のエントリも、ご一読いただけると幸いです。
 

 

tekaten.hatenablog.jp

 

 
 
 
 
 
 
 

■ ゆとり世代の退職理由ランキングを見てみよう

 

 
 
 ではまずはじめに、「ゆとり世代の退職理由ランキング」を見てみることにしましょう。
 
 

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出典:VORKERS株式会社様
 
 
 こうしてランキングを見てみると、退職する理由としてはもっともらしい項目がランクインしているように感じられます。職場環境に関する悩み、働くことそのものに関する悩み、自分の今後を考えていく上での悩み、などが主にランクインしています。
 
 どの順位の項目も、決してゆとり世代だから特有の退職理由であるというわけではなく、働く人達が抱える潜在的な悩みなのではないか。そんな風に思います。
 
 ゆとり世代と言われる現代の若者は、その働く人達が抱える悩みに対してすごく正直であり、自分自身の自由を望む傾向があるのからこそ、悩みをただの悩みと捉えず、退職して次の行動に移ろうとするのだと思います。そういった点では、欧米諸国でありがちな「自分のキャリア形成のための転職」が当たり前であるように、現代の日本でも自分のキャリアを考えて行動に移す時代が到来しているのかもしれません。
 
 これまでの時代性であれば、一度就職した会社で定年を迎えるまで働くことが当たり前であり、それを守れずに途中で退職や転職を選ぶ人達は「甘い」とか「未熟」とか「イレギュラー」だと言って扱われる風潮がありました。しかし、実際の社会を見てみると、会社側の理由で離職を余儀なくされてしまったり、急に子会社化されてしまったりと、定年まで働くことすら叶わない社員がいることも事実です。雇用の数を見てみても、正社員として採用されている人が少なくなっているのも問題点。
 
 数年前まで言われていた、終身雇用なんて、徐々に薄れていっているような時代です。そう考えていくと、ゆとり世代が退職を選び、もっとやりたいこと、もっと自分を活かせることを求める傾向は、むしろ当たり前だとすら考えられます。
 
 
 
 さて、なぜゆとり世代が退職を選ぼうとしているのかについて、てかてんなりの考え方を述べたところで、本題に戻りましょう。
 
 今回の「ゆとり世代の退職理由ランキング」の1位から10位までの項目について、一つひとつ簡単に考察していきたいと思います。
 
 
 
 
 
 
1 キャリア成長が望めない
 
 
 
 
 就職活動時に、自分が一生をかけてやりたいことが見つかっている人なんてごく少数派。しかも、その少数派の中から、望んだ職種につける人は一握りどころではなく、「ひとつまみ」程度のものでしょう。
 
 だとすれば、今努めている会社では「キャリア成長が望めない」と考えている人は、結構多いのではないでしょうか。
 
 働いている中で、本当にやりたいことが見つかり、今の仕事とは違ったジャンルに価値を見出したとすると、そのまま一生今の仕事を続けていても、望んだキャリアは形成できません。また、働いていて、その業界が好きで勤めているとしても、勤務している職場によっては望んだキャリアが形成できない場合もあるでしょう。
 
 せっかく一生に一度の人生なのですから、望んだキャリアを形成するために、退職を選ぶというのも一つの手段だと考えられます。
 
 
 
 
 
 
 
2 残業・拘束時間の長さ
 
 
 
 
 仕事をしていく上でやっぱり考えていきたいのが、「ワークライフバランス」でしょう。
 
 ワークライフバランスとは、その名の通り、仕事と私生活のバランスのことで、仕事時間が長すぎると私生活を楽しむ時間が削られてしまうので、残業時間を調整したり、ノー残業デーを作ったりする活動のことを指します。
 
 仕事が充実していても、仕事にやりがいが感じられても、私生活を満喫できないような状態だと何のために働いているのかわかりませんよね。
 
 働く為に生きているのではなく、生きていく為に働いている。のですから。
 
 もちろん、仕事に生きがいを感じて、人生かけて仕事をしよう!という気持ちの方もいらっしゃると思いますが、それも私生活が充実してこそのこと。
 
 近年では、サービス残業だらけのブラック企業の話が持ち上がることもよくあります。つまり、残業をさせられて私生活の時間まで割かれているのにも関わらず、それに見合った賃金すら支払われない。
 
 こんな状態が一生続くと考えると、やはり労働条件の良い職業への転職を考えることも多々あると思います。
 
 そういった理由からも、第2位に残業・拘束時間の長さがランクインしているのでしょう。
 
 
 
ワークライフバランス」に関しては、「プライベートな時間を確保したければ、「残業はできるだけしない」と言い続けよう」のエントリに詳細をまとめていますので、よろしければご一読ください。
 

 

tekaten.hatenablog.jp

 

 
 
 
 
 
 
3 仕事内容とのミスマッチ
 
 
 
 
 就職して、いざ職場に配属されてみると、伝えられていた仕事内容と全然違っていた。こういう話はよくあることですが、「よくあってはならない」と思います。労働の契約を結ぶ上で、労働者にも業務内容を選択する権利があるのですから。
 
 また、仕事内容とのミスマッチの中には、仕事内容に納得した上で就職したけれど、やっていくうちに「自分には合ってないな」と分かることもあります。
 
  仕事というのは、「◯◯に関する業務です」と一言にいっても、多種多様な仕事をしなければならないものです。
 
  ある製品の開発をすると一言にいっても、製品の企画、評価、製図、試作、量産などの工程の他、細かいもので言えば清掃、ゴミ捨て、5S、会議、業務計画、ノウハウ継承、報告書作成、プレゼン資料作成・・・挙げればきりがないほどの雑務があります。
 
  製品の開発は好きだけど、清掃や資料作成が苦手だということだってあります。
 
  仕事内容とのミスマッチは、いかなる職場でもあり得ますが、いつもやっている仕事の何割程度がミスマッチなのかにもよるでしょう。
 
 
 
 
 
 
4 待遇・福利厚生の悪さ
 
 
 
 
  待遇や福利厚生は、働く上でとても重要なポイントになります。今ある職場の待遇や福利厚生はあまり意識しないかもしれませんが、他の職場の待遇や福利厚生、よりよい制度には目が向くものです。
 
  大企業では、かなり整った待遇や福利厚生が設けられていますが、中小企業やベンチャー企業では、まだまだ課題が残ります。
 
  自身の職場より、優れた待遇や福利厚生を求めるのは、むしろ当たり前のこと。
 
  これが退職して新たな職を求める理由になるのは、納得がいきます。
 
 
 
 
 
 
 
5 企業の方針や組織体制・社風などとのミスマッチ
 
 
 
 
  これは難しい話になりそうです。社風は置いておくとして、企業の方針や組織体制とミスマッチのまま働き続けるのは苦しい選択になります。
 
  特に、企業の組織体制上、キャリア形成が見込めないパターンがいくつかあります。
 
  例えば、品物を製造して販売する企業で、製造部門に所属している場合。
 
  よく聞く話では、製造部門に配属されたら、そのまま定年まで同じ製造部門で働かなければならないケースがあります。私の所属している企業でも、同じ風潮があります。
 
  これは、製造で必要とするスキルが簡単に身につかないことや、高い学歴を必要としないこと、協力企業や派遣社員、期間社員に製造の仕事をさせるパターンが多いことなどが挙げられます。
 
  その中に、どれだけ仕事ができて、頭が切れる人がいたとしても、企業の組織体制上、製造部門から出られない人もよくいます。
 
 
  自分は最初製造部門に配属されたけれど、そこからキャリアを形成して、技術や開発の部門で活躍したい!と考えている人がいれば、組織体制が変わらない限り、叶わぬ夢となってしまいます。
 
 
  こうしたケースからも、企業の方針や組織体制とミスマッチであることも、退職の理由となりそうです。
 
 
 
 
 
 
 
6 休日の少なさ
 
 
 
 仕事をしていく上で、休日というのは娯楽や疲れを癒す上で必要不可欠です。多くの人にとって、休日があってこその平日の仕事なのです。休日の為に、平日頑張ろう!という気持ちになるものですから。
 
 しかし、職場によっては土曜日が当たり前のように出勤だったり、5日働いて1日休みを繰り返す変則的な勤務を強いられる場合があります。単純に休みが少ないのも辛い現実ですが、一般的な休日である「土日」が休みにならない仕事は、友人や家族と休みを合わせることも難しくなるため、避けたいところ。
 
 また、有給休暇が取得しにくい職場も、多くの人にとっての悩みとなるでしょう。
 
 
 上司が休んでいないから、自分も休みを取りにくいという風習がある職場では、なかなか予定通りに休暇を取得することができず、旅行を楽しんだり友人と予定を合わせて遊びに行ったりということが難しくなります。
 
 休みあってこその仕事ですから、休日の少なさが理由となって退職を選ぶということも、よくわかります。出来るだけ自由に働けるような仕事を持つことが、多くの人の理想でしょう。
 
 
 
 
 
 
 
 
7 社内の人間関係の悪さ
 
 
 
 社内の人間関係の悪さが7位にランクインしていることには、少々違和感を覚えました。むしろ、1位や2位にランクインするくらい、重大な問題ではないでしょうか。
 
 業務内容が厳しいものであったり、休日があまりなかったりというのも、十分辛い問題ではありますが、それ以上に社内の人間関係の悪さは問題視すべきです。
 
 どんなに辛い仕事でも、親しい友人や同僚と共に乗り越えることで、楽しさを見出したり、辛さを乗り越えられたり、仕事で優れた成果をだしたりすることができます。人間関係が悪いと、それだけで仕事内容にかかわらず辛く、つまらなく感じてしまいます。
 
 あらゆる仕事が人と関わりながら進めていくものです。たった一人の個人で成し遂げられる仕事なんて、ほとんどありません。だからこそ、良い人間関係の構築は、仕事をしていく上で必要不可欠なのです。
 
 
 人間関係がうまくいかず、仕事だけでなくプライベートまでつまらないと感じてしまうことさえあるのですから、社内の人間関係の悪さが原因で、退職を選ぶことは納得がいきます。
 
 
 
 
 
 
 
8 企業・業界の将来性のなさや業績不振
 
 
 
 企業・業界の将来性のなさや業績不振は、早い段階で決断する必要がある重大な問題です。
 
 近年では、終身雇用制度も崩れつつあり、会社がいつ倒産したり分社化したり、退職通知が出されるのかわからない時代になってきました。もちろん、個人が能力を持っていれば、定年まで働くことのできる可能性はあがりますし、リストラされても再就職することもできるでしょう。
 
 しかし、業績不振が続いたり、これ以上成長の見込みを感じられない企業に勤めているのならば、早い段階で転職を考えるのもひとつの手段なのかもしれません。
 
 
 これからの時代は、個人がしっかり考えて意見を持ち、会社におんぶにだっこではなく、個人主体で意見を述べていかなければならない時代になっていくものだと思います。
 
 
 
 
 
 
9 評価・人事制度に対する不満
 
 
 この項目は、待遇・福利厚生の悪さと同じ考察ができますので、割愛します。
 
 
 
 
 
10 体力がもたない
 
 
 
 本当に体力が持たないほどの重労働であれば、体を気遣って転職することもひとつの手段です。
 
 もし自分の甘さで体力が持たないと感じている場合は、働くことについてしっかり考える必要がありますが、辛さに耐えながら仕事をして、プライベートもままならないのなら、自分のスタイルに合う職を探すことも間違いではありません。
 
 肉体労働が合う人、デスクワークが合う人、人と話す職が合う人、研究が合う人、本当に様々です。仕事は、取り組んでみるまで自分に合うのかどうかわかりませんから、続けていくうちに自分に合う職に近づけるよう、転職をしたり社内で部署の移動を考えたりするのも良いでしょう。
 
 
 
 
 

■ 終わりに

 
 
 ランキング中のどの退職理由も、ある意味では納得のいく理由だと考えられます。人それぞれ、嫌だ・辛いと感じることは異なりますから、どんなことが退職理由になっても問題ではありません。
 
 考えなければならないのは、退職する時期や問題に挙げていることがどれだけ深刻なのかということです。
 
 入社して間もない新入社員が、このランキングに出てきているいかなる退職理由を挙げようとも、わずかな社会人経験の中で「退職」という答えを出すのは早すぎると感じます。
 
 我慢して我慢して、それでも変わらなかった、辛くて人生が暗くなってきたというのであれば、新たな職場を求めて退職を選ぶことに納得できます。
 
 
 また、例えば休日が少ないことを理由に退職する場合、本当に休日が少ないことが原因なのかをしっかり考えなければならないと思います。ただ、月に1度「休日出勤」があるから、休日が少ないと感じているのであれば、それはまだまだ少ないとは言えないと思います。もっと深刻な職場はたくさんありますし、それで休日が少ないと感じるのであれば、他の職場にいって土曜が完全に休みの仕事をしたところで、続けていけるのか怪しいところです。
 
 
 すべてにおいて言えることは、このランキングが「ゆとり世代特有の退職理由ではない」ということです。今も昔も、同じようなことで悩み、考え、退職を選んできているのだと思います。
 
 

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