【書評】「天使が怪獣になる前に」(山田悠介)幼い少年が抱える悲しみとは

  

【文庫】 天使が怪獣になる前に (文芸社文庫)

 

 

「天使が怪獣になる前に」

 

山田 悠介 著 読了。

 

 

コドモランドシリーズの第2巻。

前作、「君がいる時はいつも雨」の登場人物であった少年「孝平」視点で物語が進んでいく。

 

再び現実世界に舞い戻り、兄の孝広を訪ねる。

今回は、「ナナシ」という同じコドモランドに存在する少年が登場し、ナナシの問題を解決すべく孝平が走り回るストーリーになっています。

 

このコドモランドシリーズは、すべてが文庫書き下ろしになっているので、お手頃価格で楽しめます。

よかったらシリーズ全作品を読んでみてはいかがでしょうか。

 

前作、「君がいる時はいつも雨」も書評しておりますので、以下のリンクから合わせて読んでいただけると嬉しいです。

 

 

tekaten.hatenablog.jp

 

 

 

今回のトピックはこちら!

 

 


  • 「天使が怪獣になる前に」のあらすじ

  • 再び現実世界に戻った孝平と弟のようなナナシの関係
  • 孝平の雨が降る能力とナナシの地震を起こす能力
  • 終わりに
  •  

     

    「天使が怪獣になる前に」のあらすじ

     

     

    コドモランドに戻って随分経ったある日、再び孝平は孝広の生きる現実世界へと降り立った。

    相変わらずの土砂降りだったが、気になることはない。

     

    街中で少年と出会った。

    少年は名前がないというから、孝平は「ナナシ」と名付けた。

    ナナシもコドモランドから来ていて、泣きわめくと地震を起こす能力が宿っているようだ。

     

    ナナシは、ずっと同じところから同じ場所を眺めている。

    しかもものすごく嬉しそうに。

    そこは、ナナシの母親が暮らすアパートだった。

     

    孝平は、ナナシと母子の関係を取り持とうと活躍し、徐々にナナシと母子の距離が縮まっていく。

     

    最終的にナナシと母子の関係はどうなっていくのだろうか・・・

     

     

     

    再び現実世界に戻った孝平と弟のようなナナシの関係

     

     

    再び現実世界に戻った孝平。

    やっぱり、孝広のような兄が欲しいだけでなく、母親や弟のような家族が欲しいと感じているように思います。

     

    オイラだって弟が欲しいんだい!

    みたいな台詞が聞こえてきそうな感じです(笑)

     

    孝平は、ナナシのことが放っておけないのです。

    コドモランド出身のつながりもあるし、容姿も自分より幼く見えるナナシ。

    そして、頼りないし、いつも泣いたり落ち込んだりしてばかりのナナシ。

     

    孝平は、自分がお兄さんになった気分で、ナナシの面倒を見ているのです。

     

    ナナシが母親のことを遠目で見ている時、孝平はきっと「ナナシ、よかったね!母さんが間近にいて」と思いながら、「羨ましい」とも感じている。

    孝平には崇博という兄がいますが、それでも母親と父親はもういません。

     

    ナナシと母親をつなぐ橋渡しのような行動をとるのは、単にナナシのために面倒を見てあげていることと、自分自身が母親の温もりのようなものを感じたいからかもしれませんね。

     

    そんな孝平の成長も見え隠れする作品。

    とても読み応えがあります。

     

     

     

    孝平の雨が降る能力とナナシの地震を起こす能力

     

     

    この時点でわかるのは、コドモランドから来たコドモは、特殊な能力を持っているということです。

     

    孝平は、現実世界にやってくると「必ず雨が降る」という能力を持っています。

    孝平の気持ちや気分には関わらず、現実世界に来ると常に雨が降っているのです。

    第1作のタイトル、「君がいる時はいつも雨」が表現しているのは、孝平の持つ能力のことだったのです。

     

    ナナシは、「泣き叫ぶと地震が起きる」という能力を持っています。

    孝平の雨と違って、地震はかなり問題のある能力ですよね。

    孝平も、ナナシの能力に気が付いてから、できるだけ地震を起こさせないように気を張っているシーンが目立ちますね。

     

    困ったことに、泣き叫ぶ時の激しさに比例して、地震が大きくなってしまうので、常にナナシの感情状態には気を配らないといけません。

    兄貴分気取りの孝平には、大きなミッションであるように描かれていますね。

     

     

    終わりに

     

    一見天使のように見えるナナシという少年が、泣き叫んで怪獣になる前になんとかしなければ。

    そんな孝平の思いがタイトルになったようなこの作品。

     

    前作と同じ世界観で、同じ登場人物ですが、孝平が主観となっているところが大きな違いです。

    でもやっぱり、シリーズ作品だからこそ、そういう視点の変化すらも楽しめてしまえるところがいいですね。

     

    孝平が頑張る姿も、悩む姿も、孝平自身の成長を描いているようです。

    「君がいる時はいつも雨」では、孝広にくっついて回るガキンチョとして描かれていましたから、頑張っている孝平の姿は読みがいアリですb

     

    まだまだコドモランドシリーズは続きますので、楽しみながら読んで、書評を書いていこうと思います。

     

     

    本日も、てかてんの書斎にお越し下さり、ありがとうございました。

     

     

     

     

     

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