「×ゲーム」
山田 悠介 著
「○○ゲーム」ってタイトルになっている本は、なぜか気になってしまいます。
人狼ゲーム、王様ゲーム、ライアーゲームなど、どの作品もてかてん好みで印象的だからかもしれません。
そもそも、ゲームと名のつくタイトルが好きなのは、幼少期からゲームという異世界感がたまらなくワクワクするからかも?しれませんね。
この「×ゲーム」も、手に取った時点で「よし、買おう」って思っちゃった作品です(笑)
普段は、裏表紙であらすじを読み、冒頭の数ページを読んでから買うかどうか決めるようにしていますが、直感で面白そうなものは逆に何も見ずに買ってしまうんです。
たまに外れちゃったりもしますが、この「×ゲーム」は大当たりでした。
前書きはそこそこにして、早速書評に行ってみましょう。
今回のトピックはこちら!
「×ゲーム」のあらすじ
主人公の小久保英明は、小学生だった頃「×ゲーム」という名目で仲間4人で、ある女の子をいじめていた。
その女の子の名は「蕪木毬子」
「×ゲーム」では、箱の中に様々な罰を書いた紙を入れておき、1枚取り出して書かれていた罰を実行するというゲームだった。
ある時、英明は「蕪木に告白する」という罰を引き当ててしまい、嫌々ながら告白をする羽目に・・・
12年後、大人になった英明は仕事を頑張る日々を過ごしていた。
突然、英明の前に現れたのは、見間違えるわけもない「蕪木毬子」
英明に異常な執着を見せ、12年前の復讐を果たしに来たかのように感じ始める。
果たして、英明の運命やいかに。
「復讐」のやり方が不気味でゾクッとした
12年もかけて子供の頃の復讐をしようと考えていたなんて、考えるだけでもぞっとしますよね・・・
とは言いつつも、このケースならいじめていた側に問題がありますから、復讐されて文句は言えないのですが。
(復讐の内容にもよりますよ!)
突如ふらっと現れては、こちらに接触してくるわけでもない微妙な距離で「存在を認知させよう」としてくるのですが、「あいつもしかして俺に復讐しようとしているのか?」と疑心暗鬼のように頭の中で不安が成長していくのです。
いきなり自分の前に現れて、「復讐しにきました」と襲われることも怖い。
でも何をするわけでもなくじわじわと恐怖を煽ってくるのは、違った意味でかなり怖いですよね。
しかも自分に好意を持っているような素振りまで示されると、「頼むから俺に関わらないでくれ!」と叫んでしまいそうになります。
「こいつはやばい」「もう頼むからやめてくれ」って思うような心からの恐怖を、疑似体験できるようなストーリーです。
いじめられた方には強烈な印象が残っているものだ
恐怖を描いている「×ゲーム」ですが、平行して描かれているのが「いじめと復讐」というテーマ。
いじめはいつの時代もなくなることのない人間関係の黒い部分なのですが、いじめる側といじめられる側については常に議論になります。
てかてんとしては、「いじめる側にもいじめられる側にも原因はある」という意見は理解できます。子供の頃だったりすると、誰でもいいから無差別にいじめてやろう!って感覚よりも、何かちょっと目立つところがあったり気になるところがあるから目をつけられるのです。
ですから、「いじめる側はもちろん、いじめられる側にもいじめを受けてしまった理由」はあるのだと思います。
しかし、理由があったからといっていじめられている側を責めているわけではありません。
むしろ、どんな理由があったとしても、「いじめる側」が100%と悪いと思っています。
どれだけ気に入らなくても、その子が目立っていて面白くなくても、「いじめて良い理由」なんてこの世にはないと思いますから。
「いじめられてしまった理由はあっても、いじめて良い理由はない」
それがてかてんの持論です。
いじめた側は12年間で忘れてしまっていても、いじめられた側は片時も忘れることができずに12年間を過ごしてしまうこともあるでしょう。
この物語は、それくらいいじめには強力な力があることを、暗に示しているのだと読み取れます。
終わりに
いやー、最近は連続して山田悠介さんの作品を読んでいるのですが、その中でもピカイチで怖かったですね(笑)
ホラーにも色々なジャンルがあるので、そのジャンルごとに「怖さの具合や感じ方」も違います。
物語として、命を狙われるスリルものを読んでも「怖いっ」となることはないのですが、「×ゲーム」のように「感情が怖いって叫んでる」みたいなホラーは、本当に怖いと感じます。
子供の頃に経験した金縛りがいつまでも忘れられないような感じで、「×ゲーム」の物語もついつい覚えてしまっていそうです。
「怖い作品」が読みたくて山田悠介さんの本を探しているのなら、オススメする1冊です。
他にも山田悠介さん本を書評しています。
中でもオススメの記事を以下に示しておきますので、よろしければ合わせてお読みください。
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