ニュースで報道された「トンデモ新入社員の言動」に違和感

 

 

 

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 先日、ニュース番組で新入社員についての特集が組まれていました。番組の中では、「最近のトンデモ新入社員の言動」というタイトルで、新入社員に対する問題点について語られていました。フリップに書かれていた4つの「トンデモ新入社員の言動」には、大きな違和感を抱くことになりました。
 
 ニュース番組で報道されていた「トンデモ新入社員の言動」は以下の4つです。
 
 
 
・ゲームがしたくて退職
 
・社内テニスで上司をぼこぼこ
 
・入社式の翌日に有給を希望
 
・”お局様”に失礼発言
 
 
 
 
 え?こんなことあるの?!と思う項目もあれば、なんとなくわかるような項目もあります。この4つの「トンデモ新入社員の言動」について考えていきたいと思います。
 
 まずは、4つの項目それぞれについて考えてみましょう。
 
 
 
 
 
 
● ゲームがしたくて退職
 
 
 
 4つの項目を見た中で、一番「ありえない」と感じたのが、「ゲームがしたくて退職」する新入社員がいるという現実です。新入社員の早期退職については、近頃様々な議論がなされており、「ゆとり教育」や「若者の言動」について問題視される傾向があります。
 
 
新入社員の早期退職についての考察は、”この時期話題にあがる「新入社員の退職」について考えたみた”に記事をまとめていますので、よろしければご一読ください。
 

 

tekaten.hatenablog.jp

 

 
 
 さて、ゲームがしたくて退職した新入社員は、退職の理由のひとつが「ゲームがしたいから」であっても、根本的に会社を辞めたい理由は他にあると私は考えています。若手社員や新入社員の中では、「不自由さ」が大きな問題になっています。毎日仕事をしていては、遊ぶ時間や何か趣味をやる時間を生み出すのは難しいし、働けど働けど、なかなかお金は稼げません。若手がギャンブルや副業を好む理由も、お金の不自由さを解消したいからです。さらに、お金を稼ぐために時間をかけて働くと、今度は時間がどんどんなくなって「時間の不自由」を感じることになります。このお金と時間の反比例現象が、会社にいてはどうやっても不自由さからは解放されない、という気持ちを根付かせてしまうのです。
 
 結果として、「会社を辞めたい」「転職したい」「副業で1発当てたい」という思考が生まれ、今いる会社を辞めてしまう新入社員が現れるのですね。
 
 会社をやめたい根本的な理由を問えば、「ゲームがしたいから」ではないはずです。「ゲームがしたい」というのは本音であっても、ただゲームがしたいから退職を選ぶわけではないからです。会社に勤めていたら、大好きなゲームをする時間がなかなか作れないから、「ゲームがしたいから」という退職文句が飛び出してしまったのだと思います。
 
 
 どういう理由であれ、新入社員の早期退職に関しては、なんとかするべき問題だと言えます。
 
 
 
 
 
 
 
● 社内テニスで上司をぼこぼこ
 
 
 会社に入社したばかりの新入社員は、会社で執り行われるイベントには必ず参加しなければならないような状況がつくられていると思います。
 レクレーション大会、夏祭り、創業祭、運動会、展示会、歓送迎会、忘年会、新年会など、挙げればたくさんのイベントがあり、新入社員はそれらのイベントの「主役」として参加を促されます。
 
 最近の新入社員の中では、イベントに参加することすら嫌がる人も少なくないのが現状で、前述したように「時間が欲しい、時間の不自由に悩んでいる」と考えているのに、土日を使った会社のイベントに参加したいわけがありません。もちろん、イベントに進んで参加する方もいらっしゃいますので、一概には言えませんが。
 
 例えばレクレーション大会へ参加したとき、昔の決まり(?)では、
 
「上司を勝たせて機嫌を損ねないようにする」
 
という「接待」にも似た考え方があったようです。現在でも、そうした考え方を大切にしている会社もあるようで、入社してから先輩に指導されるケースもあるのだとか。
 
 しかしよく考えてみると、違和感を感じます。新入社員としては、会社の上司や先輩と交流する機会としてレクレーション大会に参加しています。この項目のように、テニス大会だったとしましょう。学生時代、テニスをやっていた新入社員なら、ここでテニスの腕を見せて、覚えてもらおうとか、注目されたいという気持ちになるのが自然です。
 
 近頃の新入社員は、社内テニスで上司をぼこぼこにするなんて、おかしい。とニュースで取り上げられているようですが、新入社員はレクレーション大会でさえも、上司や先輩に気を使ってスポーツをしなければならないのでしょうか。
 相手の実力にもよりますが、そのレクレーション大会で先輩や上司に勝つことが問題視されていることのほうがよほどおかしいと思うのです。
 
 
 新入社員なんだから、上司には負けるのが当然だ。
 
 
 こんな考え方は、間違っていると思います。
 
 
 
 
 
 
 
 
● 入社式の翌日に有給を希望
 
 
 
 入社式の翌日にいきなり有給を希望するのは、確かに問題があると思います。何か絶対はずせない理由があって有給を取らなければならない場合はあるかもしれませんが、個人的であれば問題です。
 
 入社後、半年間は有給休暇が付与されない会社は結構ありますので、そもそもいきなり有給が取れない会社もたくさんありますが、もし入社した時から有給があったとしても、すぐに有給を希望するのはどうかと思います。
 
 「ゲームがしたくて退職」と同じように、入社式の翌日に有給を希望する新入社員は、日本中探しても数名いるかいないかだと思います。しかし残念なことに、1人でも入社式の翌日に有給を希望した新入社員がいれば、「近頃の新入社員は、いきなり有給を取ったりするらしいよ」と言われてしまうことになります。
 
 入社してから1年間は、なかなか有給が取りにくい雰囲気があるものです。仕事も覚えてない内から有給を取るなんて生意気だとか、新人の癖に俺達と同じくらい有給取ってるとか、色々なことを言われてしまいます。
 
 本来なら、入社してから付与されている有給については、本人の自由で取れるような仕組みが作られていることが理想的ですが、「組織」の中ではなかなかそうもいきません。自分一人で遂行するような仕事だけならまだしも、他の同僚や他の部署、他の会社の人と一緒に仕事をする場合は、自分だけの都合で会社を休むことは難しいものです。
 
 それだけでなく、周りの人があまり有給を取らないから、自分も有給は取りにくい。といった「周りの目」を気にしなければならないところも、問題として挙げられます。「周りの目」が特に気になるのも、新入社員にとっては辛い現実なのかもしれません。
 
 
 
 
 
 
 
●”お局様”に失礼発言
 
 
 
 
 組織内では、社内や部署内でタブーとされているような、小さなルールがあったりもします。そのルールのひとつが、お局様や権力者へ言いたいことが言えないことです。役職がある人や、なんでもかんでも指摘できる発言力のある人には、無意識の内に「意見をしない」「反論をしない」といった見えないルールのようなものがあるのです。日本人特有の問題かもしれませんね。
 
 このような「”お局様”と呼ばれる謎の権力者」や「発言力のある人」というのは、新入社員にとってはその他大勢の先輩や上司と見比べることは難しい。入社したての彼らにとっては、すべての社員が先輩であり、どの人がどのくらいえらい人なのかなんてわかりません。どの人が部長で、どの人が課長なのか、明確な”役職”がついていてもわからない場合がある程です。
 
 ですから、よほど勘の良い新入社員か権力のある人を見極めて媚びを売ろうとしている新入社員でなければ、見分けるのは至難の業なのです。
 
 しかし言い換えてみれば、新入社員の持つ「ありのままが見えている澄んだ目」で見れば、誰でも等しく平等に見えているということです。長年同じ職場で仕事をしていると、「”お局様”」や「権力者、発言力のある人」が優位に働ける様な職場ができていることに違和感を感じなくなってしまっていきます。さも、それが当たり前かとでも言うように。
 
 新入社員の目からすれば、誰でも等しく平等だから、つい「タブーにされている人」にも思ったことを言ってしまう。それが、「新入社員の問題言動のひとつ」として挙げられるのかいかがなものでしょうか。
 
 もしかすると、誰にでも思ったことを伝えられる能力は、誰もが持つべき能力なのかもしれません。
 
 新入社員の問題言動ではなく、皆が持つべき理想的な言動のひとつ、と言い換えられます。
 
 
 
 
 
 
 

■ 新入社員の癖に・・・という偏見が見受けられる

 
 
 
 
 「トンデモ新入社員の言動」を見てみると、
 
 「ゲームがしたくて退職」や「入社式の翌日に有給を希望」など、そんなことあるのか?!と思うような言動も取り上げられています。また、「社内テニスで上司をぼこぼこ」と「”お局様”に失礼発言」は、別にいいじゃないかという印象を受けます。
 
 この4つの言動が、あたかもすべての新入社員に対してなされているものだと印象付けてしまう報道がされていることが、ちょっと問題なのではないかと思います。普通に考えてみると、「ゲームがしたくて退職」するような新入社員は、日本中探しても数人いるかいないかだと思います。それでも、1人でも「ゲームがしたくて退職」した新入社員がいると、新入社員代表の行動だとでも言うかのように、「近頃の新入社員はゲームがしたいって理由で会社を辞めるらしいよ」と言われることになります。
 どうしても、若手社員や新入社員に対しては、ちょっとした言動が噂の元となり、常にターゲットとされているような窮屈感や偏見があるように思えます。
 
 
 前述してきた中にもありましたが、社内テニスで実力を発揮することは「生意気なことでも、トンデモ言動」でもなんでもありません。その新入社員にとって、テニスで自己を表現しただけなのにも拘らず、「新入社員の癖に」という考え方を持っている人達が、大切な新芽を摘もうとしてしまっているだけです。
 
 「”お局様”や権力者に対する失礼発言」だってそうです。本当に失礼なことを言ってしまった場合は別ですが、だた発言しにくい人達に対して新入社員が発言したことを問題としているのなら、その職場や社会全体のほうがよほど問題だと思います。言いたいことが言えない社会を、当たり前だから仕方ないと片付けているようでは、そこで働く人達が成長できるはずがありません。言いたいことをすべて我慢していながら仕事をしても、最高の商品やサービスが生まれるわけがありません。
 
 
 ただ、「新入社員だ」というだけで、その言動にいちいち難癖つけてしまう風潮は、日本の悪い文化だと思います。社会についてあまり良く知らない新入社員が問題言動をしてしまうことについて、多少は目をつぶるべきであり、むしろ過剰になる必要などどこにもありません。
 
 
 
 
 
 

■ 終わりに

 
 
 「どうして新入社員というだけで、目の敵にされたり、いちいち難癖つけられたりするのだろう?」
 
 
 そんな素朴な疑問を抱きながら生活している私が、たまたま目にしたニュースから生まれた今回の考察。会社勤めをしている中でも、新入社員に対する偏見のようなものを感じていたし、会話の中でも良く耳にしていました。
 
 しかし、それだけにとどまらず、入社して間もない社員が不安を感じているこの時期に、全国ネットのニュースで新入社員を過剰に報道するのはいかがなものかと、そのニュースを食い入るようにみてしまいました。この報道の中で、本当にどこかの会社であった事例を伝えてくれているのだと思っていますが、それが最近の新入社員に当てはある問題言動だと捉えられそうで心苦しいです。
 
 今後も、私なりの考えではありますが、「最近の新入社員について」「新入社員への風当たり」「新入社員への偏見」など、様々な視点から考察する機会を作っていこうと思います。
 
 
 

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